都史紀要1 江戸から東京への展開

都史紀要1 はしがき

東京奠都を経済史の方面から見て、その裏付けを行うことを意図してこの小篇を執筆した。今回これを印刷に付するにあたって全篇に改訂増補を企てたが、たまたま東京都戦災誌の多忙な編纂に従事中であったため、小増補を行うに留めた。

元来この小篇は、担当の東京都史経済方面の資料蒐集ならびに編修のかたわら、都史が簡明、正確、暢達をモットーとして集約的に記述するよう計画せられている関係上、その補足の意味合において、細説、考証、検討等を要する部分を生ずるので、その必要を充すため企図したものである。随時この種の小篇を刊行して参考に供したい。曾て印行された市史外篇の姉妹篇ともいえる。

篇中引用ならびに参考した書籍史料は、読過の便宜上行中に○印を付して細字で註した。引用文中片かなは平がなに改めた。また特に句読をほどこしたもののあるのは読解の便宜を思ったからである。

昭和二十八年三月十六日
都政史料館にて 木村 荘五

都史紀要1 目次

はしがき
第一章 明治維新経済の性格(1)
第二章 旧幕府の財政的窮迫(4)
第三章 維新政府の資金難(8)
第一節 僅少な皇室用度(8)
第二節 政費窮乏と資金調達(10)
第三節 鳥羽伏見の一戦京阪金権の嚮背を決す(14)
第四節 新政府の公債募集(20)
第五節 東征軍の金殻調達(23)
第六節 江戸城授受に依って得た金穀(25)
第七節 大総督府資金窮乏を極む(29)
第八節 彰義隊の討伐遅る(32)
第九節 軍艦購入費を彰義隊討伐費に振向く(34)
第四章 大阪遷都論から東京奠都に至る経緯(36)
第一節 大阪遷都の建議と遷都の準備(36)
一 大久保利通の大阪遷都建議(36)
二 大阪遷都の準備(43)
三 江戸の存亡(44)
第二節 江戸遷都論(46)
一 幕人勝海舟の江戸観(46)
二 勝の江戸焦土策(47)
三 前島来輔の江戸遷都論(50)
第三節 東京奠都へ飛躍(55)
一 大木喬仁、江藤新平の東京奠都建議(55)
二 大久保利通大阪遷都主張を棄て東京奠都を採る(60)
三 関東大監察使の派遣(63)
四 大総督府に於ける徳川氏処分及び江戸処置の内決(68)
五 徳川氏の継嗣決定(70)
六 徳川氏の所領及び所領高決定(70)
七 江戸の処分(廟議一決東京奠都に決定)(71)
八 東京奠都の決定と天皇の東幸(72)
九 行政上江戸府の設置について(80)
第四節 東京奠都(82)
一 東京奠都の発詔(82)
二 東京奠都の意義(84)
三 鎮将府及び東京府の開設(85)
四 東幸の趣旨を天下に諭告(88)
五 東幸の遷延と当路者の奔走(89)
六 東幸の経費調達と太政官札の流通促進(94)
七 東幸次第(105)
八 万機親裁(112)
第五節 東京施政の中心となる(115)
一 太政官東京へ移轉および京都留守官の設置と其の廃止(116)
二 江戸の地名について(119)
第五章 むすび(120)
巻頭挿絵
東京奠都の詔書写 明治元年七月十七日(83頁参照)
東京奠都につき大木民平に賜った御沙汰書明治元年六月十九日 (72頁参照)
御東幸圖(芳年筆) 明治元年十月十三日
明治天皇東京に著御在せられたる当時の錦の錦絵(105頁参照)
東京市民一同へ酒を賜わる 明治元年十月二十七日
市民歓喜の状を画いた当時絵(113頁参照)

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