都史紀要30 市制町村制と東京

はしがき

わが国の近代的地方自治制度は、明治二十一年四月二十五日公布の市制及町村制にはじまる。明治維新以来、地方制度の改革を試みてきた新政府は、明治十一年に郡区町村編制法・府県会規則及び地方税規則のいわゆる地方三新法、ついで十三年に区町村会法を制定施行したが、ここに至ってこれらを廃して、空前の規模の町村廃合を断行すると同時に、従前の区を市と改め、市町村にはじめて自治制をしき、その組織及び運営の基準を確定した。

市制及町村制の東京府における施行は翌二十二年五月一日であるが、この間、ほぼ一か年に及ぶ準備過程は、郡区境界変更=東京市域の確定、管下町村の統廃合、町村共有財産処分及びこれらをめぐる内務省との度重なる協議などいずれも曲折をきわめている。

本稿を成すに当り、われわれは同法施行に関する一連の当館所蔵史料に綿密な検討を加え、各史料の成立事情にさかのぼって考察し、史料相互の脈絡を解明して東京府における市制町村制施行に至る経過の精確な把握につとめた。いま、ほぼその全容を明らかにすることができ、いささか大方の参考に供し得るものと信じている。

史料の調査・採録は白石弘之・松平康夫・山際実及び菊池昭が協同してこれに当り、原稿作成は主として白石・松平が担当し、菊池が一部分担した。

昭和五十九年三月
東京都公文書館

市制町村制と東京 目次

はしがき

Ⅰ 市制及町村制制定の概観(1)
1 市制及町村制制定前史(1)
明治初年の地方制度と東京府下番組制、大区小区制
三新法の制定と東京府、一五区六郡の成立
2 市制及町村制の制定と施行(5)
市制及町村制の制定過程、市制及町村制の概要と特質
3 市制及町村制の東京府における実施概況(10)
東京市の発足、郡区境界変更(市郡境界確定)と町村廃合

Ⅱ 東京市域確定計画と六郡町村合併案(17)
1 町村合併の下準備(17)
市制町村制の公布と町村合併標準、取調委員の任命
町村区域戸口資力調書
2 東京市域案と六郡町村合併案の作成(27)
七月五目の内申案、九月十目の内申案、諮問案の確定
諮問順序の決定

Ⅲ 東京市域案の諮問(64)
1 区部会諮問と郡部の反対運動(64)
区部常置委員の実地調査、区部編入反対の請願
六郡有志者懇親会
六郡総代意見書、区部会諮問の中止
2 府会審議と郡部議員の辞職(79)
郡部の決議、臨時府会の開会、郡部議員の辞職
府下の動向、補欠選挙
3 再開府会と東京市域案の廃案(91)
諮問案廃案決議、東京市区改正計画と境界変更問題

Ⅳ 町村合併案の諮問(97)
1 町村合併案の諮問と知事裁定(97)
合併前町村の状況、戸長諮問会、町村会へ諮問
北豊島郡町村会の審議拒否、知事裁定と最終案調製
2 町村合併をめぐる紛争(107)
知事主導の町村合併、合併区域をめぐる紛争
新町村名選定をめぐる紛争

Ⅴ 東京市域確定と町村合併処分(121)
1 内務大臣の修正指令と府令第二十五号(121)
府知事の上申、知事弁明書、東京市域案の圧縮
小石川区地主の意見書、郡部町村の内務大臣あて請願書
閣議決定と内務大臣指令
東京府令第二十五号、隣接県との飛地の交換
区部編入町村の新町名決定
2 処分取消の請願及び訴訟(144)
市域確定処分に関する請願、町村合併処分取消の請願・訴訟

Ⅵ 町村共有財産処分(154)
1 町村制の理念と共有財産処分(154)
不要公課町村、政府の処分方針
2 東京における共有財産処分(156)
町村共有財産の実態、共有財産処分意見書
処分順序の決定と処分の実際

新町村基本財産と町村財政 町村合併表Ⅰ~Ⅳ
(Ⅰ荏原郡 Ⅱ南豊島郡・東多摩郡 Ⅲ北豊島郡 Ⅳ南足立郡・南葛飾郡)

史料篇
1 東京府管下区町村区域名称変更(明治二十二年四月十一日、東京府令第二十五号)(167)
2 東京市芝区外十区内字名称変更(明治二十四年三月十八目、東京府令第二十八号)(204)
付 東京都公文書館所蔵市制町村制施行関係書類一覧(219)