都史紀要41 明治期東京府の文書管理

はしがき

東京都公文書館では、東京市時代に編さん刊行を開始した『東京市史稿』等の刊行事業を継承しています。明治三十五年(一九〇二)に事業開始が決定された東京市史編さん事業は、明治四十四年の『東京市史稿』皇城篇第一から刊行を開始しました。しかし、昭和十八年(一九四三)七月、戦局の悪化する中、刊行の中止を余儀なくされました。その後、文書疎開などによって焼失を免れた貴重な資料群は、終戦の後、文書課四谷分室に集中管理されました。戦前からの市史編さんのスタッフもここで資料仮目録の整備等に従事しつつ刊行事業の再開に備えていました。

昭和二十七年、この場所を新たに都政史料館とし、ここを拠点として編さん事業の本格的な再開が果たされます。その初年度に第一巻「江戸から東京への展開」を刊行し、以後四十冊の刊行を積み重ねてきたのが都史紀要というシリーズです。

『東京市史稿』という基礎的史料集を編集する過程で収集された史料をもとにして、テーマ別に調査研究を深め、史料を引用しつつわかりやすい解説を加えるというのが都史紀要の基本的な性格でした。

シリーズ第四十一冊目となる本書は『明治期東京府の文書管理』と題し、明治期における東京府の文書管理史をたどります。公文書の作成・整理・保存・選別・廃棄といったプロセスに焦点を当てるアーカイブズ学的な研究の成果をふまえつつ、五つの時期に分けてその変遷過程をご紹介しています。

本書にはこれまでの都史紀要とは異なる改正を加えました。

まず、内容を資料編・調査研究編の二部構成としました。この変更は、当該テーマに係る資料をできるかぎり多く翻刻・収載し、今後さらなる研究のために活用していただきたいとの思いによるものです。したがって調査研究編では、資料編の時期区分に対応した特質を概観しつつ、解題的な叙述に努めています。研究の決定版としてではなく、当該分野の研究の呼び水としてお読みいただければ幸いです。

こうした内容の改変に対応し、とりわけ収録資料の分量を確保するため、従来のA5版からB5版・二段組みへと体裁を改めました。明治期東京府の文書管理に係る主要な動向はほぼ収録史料から読み取っていただけるものと考えています。

とはいえ、それも膨大な関連史料の全体量からすればあくまでも精選した一部分に過ぎません。本書を手がかりとして、直接当館所蔵資料群を閲覧利用していただき、さらに当該研究に広がりと深まりがもたらされることを願うものです。

本書の執筆は岩橋清美が担当しました。

平成二十五年一月
東京都公文書館

明治期東京府の文書管理 目次

第1部 資料編
第一章 市政裁判所の文書管理
第一節 旧幕府関係文書の引き継ぎ
1 慶応四年五月 三奉行所ならびに諸記録類引き継ぎの申渡(1)
2(慶応四年五月) 年番所書物控(2)
3 慶応四年六月 作事奉行取り扱いの上水記録・屋敷改新地掛等の記録類引き渡しの申渡(3)
4 慶応四年六月 島会所記録類・役所向請け取りの通達(5)
5 慶応四年六月 川船役所引き渡しのため出役の通達(5)
6 慶応四年六月 箱館会所請け取りの届書(6)
7 慶応四年七月 猿江材木蔵・役所向引き渡しの届書(7)
 第二節 文書管理事務
8 慶応四年五月 日誌開板の願書(8)
9(慶応四年五月 ) 市政裁判所職制(8)
10 慶応四年六月 市政裁判所前目安箱設置一件(9)
11 慶応四年七月 諸触配符差出方改正の伺書(11)
12 慶応四年七月 当番方にて久離帳付致す旨通達(11)
第二章 東京府の成立と文書管理事務の始まり
第一節 文書管理事務の始まり
第一項 職制
13 明治元年九月 記録方目安箱取り扱いにつき通達(12)
14 明治元年九月 市政局役々諸願届ならびに役々分課書(12)
15 明治元年九月 樽俊之助他二名市政局庶務方拝命一件(14)
16 明治元年十月 郡政局法則(14)
17 明治元年十二月 当番所詰記録方規則(15)
18 (明治二年二月) 記録方廃止後の職務分課につき伺書(15)
19 明治二年二月  記録方廃止後の記録方頭取の職務および三掛の職務内容につき伺書(17)
20 明治二年十一月 編修局設置の通達(18)
21 明治二年十一月 編修局規則制定につき達(18)
第二項 文書の作成・受付
22 明治元年十二月 在方差紙用に東京府印を彫刻する旨伺書(18)
23 明治二年三月 訴訟公事類の文書等取扱規則(19)
24 明治二年三月 差出・訴状の受付方につき通達(19)
25 明治二年三月 公事帳作成方の通達(19)
26 明治二年四月 言上帳用紙・形式取り決めにつき通達(20)
27 明治二年四月 検使見分書等の調印徹底につき通達(20)
28 明治二年六月 退庁後の諸官府藩県からの御用状の取り扱いにつき通達(20)
29 明治三年十二月 諸願・伺の付札に東京府の印を用いる旨通達(21)
30 明治四年六月 東京府日誌印刷の請書(21)
31 明治四年十二月 編修掛筆墨料下付願書(22)
32 明治五年八月 宿直時の諸官各省府県からの廻達文書取り扱いの通達(22)
33 明治五年八月 料紙取り決めの通達(22)
第三項 文書の保存・管理・廃棄
34 明治二年二月 部内の撰要書類調査の通達(23)
35 明治二年六月 常務方取扱証拠書物の管理につき伺書(23)
36 明治二年十二月 市政常務局で不用の書類を書記課で引き取る旨通達(23)
37 明治三年二月 虫喰の言上帳、漉き返しにつき伺書(23)
38 明治三年十一月 非常時御用書類搬出人足手当下付伺書(24)
39 明治四年十二月 日用書類整理のため卓上書架補理伺書(24)
第四項 文書引継目録
40 明治元年十月 庶務方諸帳面目録(24)
41 明治元年十二月 郡政局引渡目録(25)
42 明治二年正月 山田一太夫元支配所書類引渡目録(26)
43 明治二年二月 朝臣願書類常務方へ引き渡しにつき通達(27)
44 明治八年 府知事引継書(27)
第二節 管轄区域の拡大と文書の引き継ぎ
45 明治五年 品川県書類引継目録(72)
46 明治五年 小菅県書類引継目録(74)
47 明治五年 浦和県書類引継目録(78)
48 明治十一年 伊豆七島書類引継目録(81)
第三節 長崎会所の洋書の引き継ぎ
49 明治元年十一月 新潟府へ引き渡しの書類調査の照会(84)
50 明治元年十一月 西洋書籍、行政官へ引き渡しにつき通達(84)
51 明治元年十一月 西洋書籍、開成所へ引き渡しにつき通達(85)
52 明治元年十二月 東京運上所へ移管の西洋書籍、大学校へ引き渡しにつき通達(85)
53 明治二年正月 開成所、西洋書籍請取書(85)
54(明治二年四月) 外国官へ引き渡しの西洋書物目録(86)
55(明治二年四月) 運上所御備西洋書籍目録(89)
第四節 税関・各国公使館関係文書の引き継ぎ
56 明治七年五月 築地税関附外国人荷改所・品川尋問所書類請取目録(90)
57 明治七年五月 外国人荷物改所・品川尋問所書類・物品請取目録(91)
58 明治七年十月 各国公使館関係書類引継目録(93)
第三章 明治十年代の文書管理
第一節 分課規程・庁中例規・処務順序
59 明治九年一月 分課規程・庁中例規・庶務順序(95)
60 明治九年六月 府庁例規(107)
61 明治十九年一月 東京府庁処務規程(124)
第二節 記録科・記録掛の職員構成と職務内容
62 明治十一年一月 明治十年度記録科編修年報書(135)
63 明治十一年七月 記録科分掌規程(142)
64 明治十四年一月 明治十三年度庶務課記録掛年報書(144)
65 明治十七年一月 明治十六年庶務課理事年表(154)
第三節 文書編さん・保存に関する規程
66 明治十年十二月 編綴例(166)
67 明治十三年四月 郡区町村諸記録保存心得(171)
68 明治十六年十月 島役所村役場諸記録保存心得(171)
69 明治十七年一月 簿冊題名遵守の注意喚起につき照会(172)
70 明治十七年一月 非現用文書、記録掛へ引き継ぎの通達(173)
71 明治十九年三月 簿書編纂及び保存期限例(173)
第四節 書庫に関する規程
72 明治十年三月 記録科文庫架蔵規則(175)
73 明治十一年七月 記録科文庫架蔵例規(176)
第五節 利用に関する規程
74 明治十五年四月 蔵書閲覧手続(178)
第四章 地方官官制における文書管理
第一節 処務細則
75 明治十九年七月 処務細則(抄)(179)
第二節 文書編さん・保存に関する規程
76 明治十九年九月 簿書編纂及び保存期限例一部改正(181)
77 明治二十年三月 簿書表紙調製の通達(182)
78 明治二十一年八月 簿書編纂及び保存期限例(183)
79 明治二十二年六月 簿書編纂及び保存期限例一部改正(184)
80 明治二十二年十月 簿書編纂及び保存期限例追加(185)
第三節 利用に関する規程
81 明治二十一年四月 文書借覧規則(186)
82 明治二十二年三月 各課掛常用図書貸付規則(186)
第五章 知事官房制における文書管理
第一節 処務細則
83 明治二十四年一月 処務細則(抄)(188)
84 明治二十八年十月 処務細則(抄)(202)
85 明治二十八年十月 往復掛処務順序改正(206)
第二節 文書編さん及び保存に関する規程
86 明治二十三年十二月 簿書編纂及び保存期限例改正(209)
87 明治二十七年一月 文書編纂及び保存例改正(210)
88 明治二十八年九月 甲号文書種別標準規程(216)
89 明治四十年三月 文書編纂及び保存例改正(238)
第三節 書庫に関する規程
90 明治二十七年一月 文庫規定(243)
91 明治四十年三月 文庫規定改正(244)
第四節 利用に関する規程
92 明治二十七年一月 文書帳簿及び図書印刷物借覧規則(246)
93 明治二十八年十月 知事官房記録掛処務規程・文書図書借覧規程改正(246)
第五節 記録管理事務の沿革
94 明治三十年 記録事務提要(248)
第2部 調査研究編
はじめに(267)
第一章 市政裁判所における文書管理
第一節 旧幕府関係文書の引き継ぎ(268)
歴史史料としての旧幕府引継書 江戸町奉行所の接収 諸役所の文書の引き継ぎ
第二節 市政裁判所における文書管理事務(270)
市政裁判所の職制 久離帳の扱い 市政日誌のはじまり
第二章 東京府の成立と文書管理
第一節 職制の変遷と文書管理事務(272)
東京府の開庁 開庁当初の文書管理事務 
明治二年二月の職制改正と記録方職務分課 明治二年七月の職制改正
文書の受付 府印・罫紙の使用 言上帳の作成と整理
文書の保存と非常時の搬出 編修局の設置
明治三年以降の職制改正と文書事務
第二節 地方行政システムの整備と文書管理事務(276)
明治八年知事事務引継書類 全国記録保存事業と文書管理
府県事務受渡規則の制定
第三節 税関事務の引き渡しと文書・図書の引き継ぎ(277)
西洋書籍の引き継ぎ 東京運上所の引き継ぎ
第四節 管轄区域の拡大と文書引き継ぎ(278)
管轄区域の拡大 品川県の文書引き継ぎ 小菅県・浦和県の文書引き継ぎ
第三章 明治十年代の文書管理
第一節 文書事務担当組織の変遷(281)
明治十年代の文書管理の特質 明治九年一月の職制改正
明治九年三月の職制改正 明治九年六月の東京府庁例規
その後の組織改正
第二節 文書の収受・弁理・記録・送達(283)
稟議制の導入 明治九年一月東京府庁例規に見る文書事務の流れ
簿冊と印の作成 明治九年六月東京府庁例規に見る文書事務の流れ
編綴例の導入
第三節 記録科・記録掛の職員構成と職務内容(287)
明治十年の記録科編修の職務と職員 旧幕府引継書の整理
明治十三年・十六年の記録掛の職務と職員
記録科(掛)旧幕府関係史料の収集 収集史料の活用
府史・地誌編纂事業の消滅
第四節 文書の保存・利用に関する規程の制定(297)
記録科文庫架蔵規則の制定 蔵書閲覧手続きの制定
第五節 保存年限制度の導入(299)
明治十九年一月の例規改正 保存期限令の導入
第四章 明治二十年代の文書管理
第一節 地方官官制の成立と文書管理事務(301)
明治二十年代の文書管理の特色 明治十九年七月の組織改正
簿書編纂及保存期限令の改正 公文書・図書の利用と管理
第二節 知事官房制の導入と文書管理(303)
明治二十三年十月の職制改正 その後の文書事務担当の変遷
文書の収受・弁理・送達 東京府庁文書編纂及保存令の制定
東京府文庫規程の制定
第三節 明治三十年代以降の状況(307)
文書管理事務の変遷 文書編纂及び保存例の改正
おわりに(308)