史料解説~明治の迷子犬

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【解釈】

内容を現代文に訳してみましょう。

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前月[明治8年9月]14日頃から当公使館[ドイツ帝国公使館]にいる小さなオス
犬1匹がどこへ迷ったのか、あるいは盗まれたのか、まだ[行方が]わかりません。
その色は茶色で毛は短く、足は丈夫で曲がっています。
顔、耳とも長く(その毛色は違いますが全体としては狸に似ています。)
この犬の種類はまだ日本に存在しません。右の趣旨は日本帝国
警視庁へも届けて探索の最中です。この犬どこに
いても売買を禁じます。ついては見つけてご持参の
方へは格別のお礼をいたしますので、お知らせください。以上
           永田町1丁目 
  明治8年10月     ドイツ帝国公使館

犬の種類は?

広告文によれば、犬は小型犬であったようです。

一体どんな種類の犬だったのでしょうか?ドイツ原産のダックスフントに近いような気がしますがどうでしょうか?

300枚の広告文

この書類は、東京府の第三大区一・二小区に送られてきた様々な布告類を編綴した冊子『御布告留』の中に綴じられていた公文書です。第三大区一・二小区は、現在の千代田区麹町から永田町にかけての地域にあたります。当時ドイツ公使館は現在の国立国会図書館(東京都千代田区永田町1―10―1)の位置にありましたので、飼い主の近隣地域に対して捜索が依頼されたわけです。

付属文書によれば、この広告は、ドイツ大使館が作成して警視庁に捜索を依頼したものでした。東京府庁へは300枚配布され、このうち200枚が第三大区区長に配られました。区長は各小区の掲示場へ張り出して、見当たり次第東京府庁の庶務課へ届け出るように指示を出しています。

300枚もの広告文を作成・配布したのですから、大切なペットだったに違いありません。気になるのは、このワンちゃんが見つかったかどうかですが、ご安心ください。大量の広告の甲斐あってか、翌11月の9日に犬が発見されたとの知らせが同じ冊子の中に綴じられています。

公文書に垣間見える地域の「日常」

「公文書」というと、堅苦しい、日常から縁遠いものと思われがちですが、今回ご紹介したように、迷子の犬とその捜索といったような、地域における何気ない出来事を知ることができる意外な一面があります。

特に明治初年の公文書は、大小さまざまな事柄に関する書類を、時系列で綴じこんでいるものが多くあります。当館情報検索システムでは、そうした公文書の目録情報を簡単に検索することができます。ぜひ一度お試しください。