史料の解読と読み下し例~トルコ人、明治の東京にあらわる

(出典:「トルコ人内地旅行免状下付方出願の件に付国籍証書交付の旨外務省庶務課長心得より照会」 「普通第1種 稟申録・雑件之部〈官房外務掛〉」請求番号:620.D3.14

【史料】

トルコ人、明治の東京にあらわる_解読 トルコ人、明治の東京にあらわる_解読

解読文

明治廿六年七月四日  官房主任属奥畑健太郎
知事 印  官房書記首席 印
  内務部長 課長  外務掛首席 印
    外国人内地旅行之件上申按
     外務大臣宛     知事
   土耳其国人内地旅行免状下付ノ儀上申
府下芝区露月町十一番地旅人宿営業参賀安方止宿
土耳其国人ナシフ、ヱリヤス、アントワーヌナル者内地旅行
免状下付方願出候処仝人義ハ自国於テ発行ノ旅行券携帯
致居候ニ付仝国商人ニ相違無之相認メ候条該免
状御下付相成度此段及上申候也
 理由
  本件口頭ヲ以テ申出ノ処言語充分通セザルニ
  ニ拠リ外務省ヘ同伴ノ上取調フルニ自国旅行券ヲモ
  携帯スル者ニシテ土耳其国商人ナルコトハ
  相違無之然レトモ無條約国人内地旅行ノ儀ハ
  未タ類例モ無之ニ付同省主任属岡田道二
  ニ付キ其取扱手続打合タルニ其国籍
  身分等ヲ証明シ該免状下付方申出可然趣
  ニ付本按ヲ草ス

読み下し文

明治廿六年七月四日  官房主任属奥畑健太郎
知事 印  官房書記首席 印
  内務部長 課長  外務掛首席 印
    外国人内地旅行之件上申按
     外務大臣宛     知事
   土耳其(トルコ)国人、内地旅行免状下付の儀上申。
府下芝区露月町十一番地、旅人宿営業参賀安方止宿
土耳其国人ナシフ、ヱリヤス、アントワーヌなる者、内地旅行
免状下付方願出候処、仝人義は自国於て発行の旅行券携帯
致居候に付、仝国商人に相違これ無きと相認め候条、該免
状御下付相成りたく、此段上申におよび候也。
 理由
  本件口頭を以て申出の処、言語充分通ぜざるに
  に(ママ)拠り、外務省へ同伴の上取調ぶるに、自国旅行券をも
  携帯する者にして、土耳其国商人なることは
  相違これ無し。然れども、無條約国人内地旅行の儀は
  未だ前例もこれ無きに付き、同省主任属岡田道二
  に付き其取扱い手続打合せたるに、其国籍
  身分等を証明し該免状下付方申出然るべき趣
  に付き、本按を草す。



解釈

東京府芝区露月町十一番地にある旅館参賀安方に宿泊するトルコ人のナシフ・ヱリヤス・アントワーヌという者が、日本国内の旅行免状発行を願い出ましたが、

同人は、自国(トルコ)で発行した旅券を携帯しているので、トルコ出身の商人に間違いないと認められます。

そのため、彼が希望する免状を発行して頂きたく上申します。

理由

ナシフ・ヱリヤス・アントワーヌはこの件を口頭で申し出ましたが、言語が充分に通じないので、外務省へ同伴して取り調べたところ、

自国の旅行券をも携帯している者なのでトルコ国商人であることは間違いありません。

しかし、条約を締結していない国の人間が日本内地を旅行するということは類例もありませんので、

外務省の主任属岡田道二に取り扱い手続きについて打合せたところ、その国籍や身分などを証明し免状の発行を申し出てよろしいそうなので、この案を作成しました。

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