東京都公報の歴史 加除式例規集の効用

日頃法令に基づいて仕事をする行政関係者や司法関係者にとって、現行の法令や規則を内容別に編集したものが手許にあれば大変便利です。

東京都の場合、現行の条例、規則、告示、訓令、通牒などを内容別に分類編集して、五十音順の索引までついた「都政六法」や加除式の「東京都令規集」、電子データとしての「東京都例規集」などがあります。

区市町村の場合も、それぞれ例規集を発行して、つねに内容を更新しています。これらは、公立図書館に備え付けてありますから、誰でも気軽に閲覧できます。最近は、全国各地の多くの自治体で例規集の電子化が進み、ホームページ上に登載していますから、パソコンさえあれば、望みの例規集に簡単にアクセスできるようになりました。

執務参考用として法令集を編集することは、実はずいぶん昔から行われてきたことで、たとえば江戸の町触(まちぶれ)等を編集した「撰要永久録」や、明治時代に東京府が編さんした「法令類纂」などもそうした部類に入るでしょう。

東京府の「法令類纂」は、政府の布令や布告、東京府や警視庁の布達類を分類編さんしたもので、慶応3年(1867)から明治22年(1889)までをカバーしています。あまりその存在が知られていませんが、明治初期の東京の歴史を調査研究する上での基本文献の一つです。東京府の罫紙に墨で書かれたオリジナル本のほか、かつて東京市役所が筆写した写本がそれぞれ1セット存在するにすぎません(共に東京都公文書館所蔵)。

法令規則の数が厖大となるにつれて、法令集や例規集の需要はますます高くなり、明治20年代から30年代になると、出版物としての法令集が登場するようになりました。たとえば、東京府知事官房が出版した明治30年12月末現在「現行東京府布令類纂」などはこの種の出版物としては早い時期に属するものではないでしょうか。

警視庁が出版した「警視庁令類纂」は、それよりもっと早く、第1版は明治7~20年6月現行で、第6版が明治31年8月末日現行となっています。

現行の法令を改正のたびに加除できる加除式例規集が登場したのは明治37年のことだといわれていますが、帝国地方行政学会など、こうした需要に応えるための専門の業者も数多く誕生しました(この項、株式会社ぎょうせいのホームページによる)。

現行例規集は、原本が更新され、加除が止まって内容が現行でなくなった時点でその存在価値はなくなります。大抵の場合は、不用物=ゴミとして廃棄処分される運命にあります。しかし、歴史研究の分野では、この「ゴミ」にこそ棄てがたい利用価値があるのです。

歴史研究にとって、内容の加除=更新が止まり、過去のものとなった例規集ほど便利で重宝なものはありません。なぜなら、更新がとまった時点での法令規則が、内容別に分類され、索引付きの形でタイムカプセルのように完全に保存されているからです。ある特定の時代にどんな法令規則が存在していたのかを知るのに、これほど便利なものがあるでしょうか。

そしてなによりいいのは、こうした例規集の特徴として、かならず法令毎に制定年月日とその後の改正年月日が「沿革」として注記してあることです。

法令や規則の改正過程を調べることは、歴史研究の大切な基礎作業のひとつですが、経験された方はよくおわかりのように、実はこれほどめんどうな作業もありません。官報や公報、法令全書などを一枚一枚めくって目当てのものを探し出すのにどれほどの手間と時間を費やさなければならないか。その点、こうした例規集の「沿革」は、そうした手間を大幅に省いてくれ、研究の効率化に大いに貢献するものと言えるでしょう。

以下に、警視庁、東京府、東京市、東京都関係の、もはや過去のものとなった「現行」例規集の所在一覧を示しておきましょう。もちろん完全なリストではなく、洩れているものも多々ありますが、東京の歴史を調査研究される場合のとっかかりとして活用していただければ幸いです。

  1. 各所蔵機関の書肆データを簡略化して掲載しています。詳しくは各所蔵機関へ。
  2. 所蔵機関の略号は以下のとおりです。
    国会=国会図書館、学芸大図=東京学芸大学附属図書館、早稲田=早稲田大学総合図書館、都立中央=都立中央図書館、公文書館=東京都公文書館

東京都公文書館では、法令類纂、警視庁東京府公報、東京市公報の目次をデータベース化しています。十分なものとはいえませんが、当館閲覧窓口の端末で検索することが出来ます。また、電話による問い合わせにも応じています。

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