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小笠原亜熱帯農業センター

平成12年度試験研究成果概要

1) 花き観葉植物に関する試験

(1) アンスリウムの開花状況の把握と肥料施用法の検討
開始年度:
平成11年度
担当者:
松本 剛
目的:
小笠原からの農産物の出荷は、週に1度ほどの船便に限られている。アンスリウムは花保ちがよく輸送に耐えられるので、市場出荷することも可能と思われる。
ここでは、開花状況の把握と施肥について検討した。
成績摘要:
1)2〜3年生の開花苗では、1株からおよそ2ヶ月に1本程度の開花が見られた。仏炎苞の長さは'キャンキャン'で平均して15?ほどになった。
2)用土に枯ヤシ葉チップを用いた。施肥量が多いと栽花数は若干増加した。一方、施肥形態による差異はほどんど見られなかった。用土に枯ヤシ葉チップを利用する場合は、施肥に単価の安い化成肥料を少量(14-14-14では3g/株)、3ヶ月に1回程度施用することで十分と思われた。

2) 熱帯果樹に関する試験

(1) アテモヤの果実特性の把握
開始年度:
平成10年度
担当者:
渋谷 圭助
目的:
アテモヤの果実特性を把握し、小笠原における栽培及び普及に供する資料とする。
成績摘要:
1)本試験には'アフリカンプライド'を用いた。
2)糖度は平均22.2と高かった。
3) 1果重は平均307.2gであったが、ばらつきが大きかった。
4) 収穫時期は年度によって若干のばらつきがあるものの、9月上旬から10月中旬に集中し、開花から収穫までの平均所要日数は 116日だった。
(2) パッションフルーツの生産安定技術の開発
ア 果実特性の把握
開始年度:
平成11年度
担当者:
渋谷 圭助
目的:
果実特性を把握することで、輸送・貯蔵に関して新たな知見を得る。
成績摘要:
1)パッションフルーツを4℃、10℃、常温で保存し、10日間の酸度変化を調査した。
2)4℃で保存すると酸度が上昇することが確認された。
3)10℃で保存すると酸度に大きな変化が生じないことが確認された。
4)常温で保存すると酸度が減少することが確認されたが、シワの発生が甚だしかった。
5)また、収穫時もしくは収穫後に落果等の強い衝撃を与えると、果実内部に形態的変化を生じるとともに、酸度が上昇することを確認した。
ア 作期拡大技術の検討
開始年度:
平成11年度
担当者:
渋谷 圭助
目的:
パッションフルーツの収穫期拡大を図る。
成績摘要:
1)電照栽培により促成栽培したパッションフルーツの開花数の推移、収穫量の推移、糖度・酸度の推移を調査した。
2)11月下旬から電照処理を開始することで、12月下旬から開花が始まり3月下旬まで続いた。
3)収穫は3月中旬から6月上旬まで行われ、開花から収穫までの平均所要日数は約78.1日だった。
4)糖度は4月中旬まで低く推移したが、4月下旬から上昇した。
5)以上の結果、電照処理により収穫時期が2ヶ月以上前進したが、果実品質には問題が残った。

3) 野菜に関する試験

(1) 高糖度トマトの栽培技術の確立
ア 桃太郎の整枝法の検討
開始年度:
平成9年度
担当者:
吉原 恵子
目的:
小笠原におけるトマトの施設栽培技術の確立に供試すべき、糖度が高くて品質の良いトマトの品種選定を行った結果、「桃太郎」が有望であると思われた。 そこで、桃太郎の整枝法について検討する。
成績摘要:
1)種子1本仕立て(慣行栽培)、2本仕立て、3本仕立ての3処理を設けた。
2)2本仕立ての主枝および第1側枝の糖度は、1本仕立てに比べて常に低い値であった。
3)3本仕立ての第1、2側枝の糖度は、1本仕立てに比べて常に高い値であった。
4)3本仕立ては1本仕立てに比べて、糖度8度以上の果実を多く収穫できた。
5)桃太郎の整枝は、3本仕立てにすることで果実糖度が高まることが明らかになった。
イ 高畝+マルチ栽培の効果
開始年度:
平成9年度
担当者:
吉原 恵子
目的:
小笠原におけるトマトの慣行栽培は平畝+全面施肥である。予備試験で平畝+溝施肥栽培は、慣行栽培に比べて果実糖度を高める傾向が見られた。 そこで、高畝栽培やマルチ栽培を試み、その効果について検討する。
成績摘要:
1)供試品種は桃太郎、桃太郎8の2品種。
2)各品種ともに、慣行栽培するよりも高畝+溝施肥栽培することで、より糖度の高い果実を収穫できた。
3)高畝+溝施肥栽培にマルチングを加えた結果、常に糖度がやや高くなった。
4)マルチングによる効果は、桃太郎8よりも桃太郎で顕著に認められた。
5)小笠原における高糖度なトマトの生産には、溝施肥栽培+高畝栽培に加えて、マルチングすることが有効な栽培法であると思われた。
ウ  根域制限の効果
開始年度:
平成9年度
担当者:
吉原 恵子
目的:
高糖度なトマト栽培は根域制限が効果的であることが知られている。
そこで、小笠原のトマト栽培における根域制限の効果について検討する。
成績摘要:
1)供試品種は桃太郎、桃太郎8の2品種。
2)不透根透水シートを地表面30?下に埋設し、根域を制限した。
3)根域制限は、慣行栽培に比べて最大約1度程度、糖度を高める傾向が見られた。
4)各品種ともに根域制限することで、糖度8度以上の果実を収穫することができた。開花は基部に近いほど早く、枝別では主枝、側枝1、側枝2、側枝3の順に早かった。
5)小笠原においても高糖度なトマトを栽培するために、根域制限することは効果的であった。
エ ナス台木を用いたトマト栽培試験
開始年度:
平成9年度
担当者:
吉原 恵子
目的:
桃太郎をナス台木およびトマト台木に接いで、収量および糖度に及ぼす影響について検討する。
成績摘要:
1)供試品種は、穂木品種に桃太郎、トマト台木品種にヘルパーM、ナス台木品種に赤ナス、耐病VF、サポート1号の3品種。
2)トマト台木品種ヘルパーMの糖度は、自根に比べて常に低かった。
3)ナス台木3品種と自根との糖度に顕著な相違は認められなかった。
4)ナス台木3品種間で糖度の高い果実を最も多く収穫できたのは、サポート1号であった。
5)ナス台木に桃太郎を接ぎ木しても、糖度は高くならなかった。?ナス台木に接ぎ木したほうが、トマト台木ヘルパーMに接ぐよりも、糖度を高めることがわかった。
(2) 島外出荷をめざしたトマト品質管理技術の向上
ア 「小笠原トマト」の特性把握
開始年度:
平成11年度
担当者:
井川 茂
目的:
小笠原における無加温半促成トマト栽培の収量性および果実品質特性を明らかにし、当該出荷をめざした将来の方向性を明らかにする。
成績摘要:
1)'桃太郎''桃太郎8'を6段果房まで収穫したところ、可販収量は露地栽培(約4.8t/10a)に比べハウス栽培(約5.9t/10a)が多くなり、ハウス栽培の優位性が明らかになった。
2)品質について、糖度はほぼ同じであるが、'桃太郎'はやや有機酸が高く、'桃太郎8'は果実硬度が高い品種であることがわかった。
3)この結果から果実硬度が高い'桃太郎8'の施設栽培は、小笠原からの島外出荷に適していることがわかった。
イ 収穫期間と保存温度がトマトの品質に及ぼす影響
開始年度:
平成11年度
担当者:
井川 茂
目的:
果実の収穫時期とその後の保存温度が小笠原産トマトの品質に及ぼす影響を明らかにし、島外へ有利販売するための流通環境について考察する。
成績摘要:
1)現在の流通条件に近い催色期収穫20℃5日間保存では、果重が減少し果実硬度が低下するなど品質が劣化し、市場における差別化商品として十分な品質のトマトとは言い難いことがわかった。
2)しかし、桃熟期収穫5℃5日間保存では島内完熟収穫果実に近い品質で本土まで流通させることが可能であると考えられた。

4) 土壌肥料に関する試験

(1) 小笠原の農地土壌の状況(農家圃場の土壌診断)
開始年度:
平成11年度
担当者:
松本 剛、渋谷 圭助
目的:
小笠原の土壌は、苦土含量が高く、重粘土質でCECが比較的高い等の特徴がある。近年、鉄骨ハウス等の施設化、農地造成が進んでおり、土壌管理の必要性が増している。 そこで、農地の土壌調査および診断を行った。
成績摘要:
1)ECは、ハウス土壌で高いところが多く見られた。特に、ECが高く、pHが低い圃場は、硝酸態窒素による酸性化が考えられる。
2)pHが低い圃場が多く見られた。
3)塩基バランスは、Ca/Mg比が小さい圃場が多く、交換性苦土がかなり高い。
4)可給態リン酸は、ハウス土壌等に非常に高いところがあった。一方、一部の圃場では不足しているところも見られた。
5)造成地では土壌改良されており、可給態リン酸や交換生石灰については改善されていたが、交換性苦土が高いことや物理生が悪い等の問題が見られた。
(2) 施設での土壌の管理(緑肥・飼料作物による過剰養分除去の検討)
開始年度:
平成11年度
担当者:
松本 剛
目的:
小笠原では施設栽培が多くなっている。降雨による養分の流亡が無いため、蓄積が懸念される。実際に農家のハイプハウス土壌では養分過剰が見られる。
一方、小笠原の土壌には苦土が多いという特徴があり、塩基バランスを悪化させる原因の一つになっている。そこで、緑肥・飼料作物を栽培し、過剰養分の除去が可能か検討した。
成績摘要:
1)各供試作物は4種で、収量はソルゴーが最も高く、次にギニアグラスとヒマワリ、デントコーンの順であった。
2)ECは緑肥等の栽培により下がり、硝酸態窒素が吸収されていると見られる。
3)可給態リン酸の減少は見られなかった。
4)交換性苦土は、デントコーン、ソルゴーで栽培前に比べて10〜20%程減少しており、ヒマワリでも若干減少した。一方、ギニアグラスではほとんど減少しなかった。
5)交換性加里は栽培後、20〜30%程減少した。

5) 病害虫防除に関する試験

(1) アフリカマイマイの生態と防除に関する試験
ア 遺伝的多様性の検討
開始年度:
平成6年度
担当者:
大林 隆司(協力:千葉大学、東京農工大学)
目的:
小笠原のアフリカマイマイの減少要因として、個体群の遺伝的多様性が侵入時に低かった可能性を想定し、いくつかの手法により遺伝的多様性を調査する。
成績摘要:
1)アロザイムによる調査では、対立遺伝子頻度からもGst分析からも小笠原の本種個体群の遺伝的多様性が消失している傾向は見いだせなかった。
2)DNAフィンガープリント法の結果(同一地域内個体間、異地域個体群間のバンド共有率)からも、遺伝的多様性が消失している傾向は見いだせなかった。
3)以上により、遺伝的多様性の低下が減少要因である可能性は低いことが示唆された。
イ 嗜好性と被害部位の調査(施設内試験)
開始年度:
平成6年度
担当者:
大林 隆司
目的:
本種による被害の受けやすいとされる4種類のウリ科野菜苗を用い、施設内で嗜好性や被害部位を調査する。
成績摘要:
1)カボチャ、メロン、ズッキーニ、ニガウリのうち、ズッキーニが被害株率が高く(58.3%)、カボチャとニガウリがこれに次いだ(33.3%)。
2)被害部位はもっぱら葉と葉柄に集中し、茎への加害はほとんどなかった。
3)今後、生育ステージ別の被害部位・程度の評価やウリ科以外の作物の被害調査、放飼密度を変えた場合の被害状況の調査などが必要と考えられた。
ウ 各種メタアルデヒド剤、資材の効果比較(室内試験)
開始年度:
平成6年度
担当者:
大林 隆司
目的:
従来と異なる製剤形態のメタアルデヒド剤や、金属イオンを利用した根域制限資材(シート)の侵入阻止効果を室内で検討する。
成績摘要:
1)耐水(雨)性が高いとされる薬剤と従来薬剤との比較では、効果に大きな違いはなく、また従来薬剤でも散水による効果の低下はほとんどなかった。
2)酒かすを配合して誘引性を高めたとされる薬剤と従来薬剤との比較でも、効果に大きな違いは無かった。
3)金属イオンを利用した根域制御資材(シート)には侵入阻止効果はなかった。
4)以上より、従来薬剤でも効果があるものと考えられた。
エ 各種メタアルデヒド剤、忌避資材の効果比較(圃場試験)
開始年度:
平成6年度
担当者:
大林 隆司・井川 茂・金川利夫(営農研修所)
目的:
従来と異なる製剤形態のメタアルデヒド剤や、金属イオンを利用した土地改良資材の侵入阻止効果を圃場で検討する。併せて、散布法の違いによる効果も比較する。
成績摘要:
1)耐水(雨)性が高いとされる薬剤、酒かすを配合して誘引性を高めたとされる薬剤、金属イオンを利用した忌避資材ならびに従来薬剤との比較では、従来薬剤の効果が高く、また、忌避資材には効果が認められなかった。
2)散布方法として'ばらまき'が効果的であった。
3)以上より、従来薬剤を'ばらまき'にすることで効果的な防除が可能であると考えられた。
(2) 高所得型作付け体系の開発
ア トマトとパッションフルーツの混植について
開始年度:
平成12年度
担当者:
井川茂、渋谷圭助
目的:
パッションフルーツとトマトを混植した場合のトマトの栽培時期について検討する。
成績摘要:
1)処理区は、パッションフルーツ単独区、トマト12段まで収穫区、トマト7段まで収穫区。
2)トマト収量は、7段収穫以前まで両区の差はなかった。
3)パッションフルーツ収量は、単独区が最も多く、トマト7段区、トマト12段区が次ぎ、7段区と12段区の差が大きかった。
4)パッションフルーツの開花は2月下旬から開始した。トマト7段区収穫は1月上旬に終了した。
5)トマト在圃期間が長いとパッションフルーツ収量が減少することとパッションフルーツ受粉作業を考えると開花が始まる2月までにトマト栽培を終えることが望ましい。

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