職場のパワーハラスメントに関する実態調査(平成24年12月)
 厚生労働省は、平成241212日、パワーハラスメントに関する実態調査を委託事業により実施し、その報告書を公表した。以下は報告書のポイントである。

1 調査の概要
(1)企業調査
 全国の従業員(正社員)30人以上の企業17,000社に調査票を郵送した(配達不能252件)。300人以上の企業については全社を対象とし、299人以下の企業については、業種、社員数の分布に基づき無作為抽出を行った。回収率は27.3%。
(2)従業員調査
 全国の企業・団体に勤務する2064歳の男女9,000名(公務員、自営業、経営者、役員は除く)に対してインターネット調査を行った。対象者については、総務省「就業構基本調査」を参考に、性、年代、正社員・正社員以外の3点から割付を行った。
2 主な調査結果
(1)相談窓口における従業員からのパワーハラスメントの相談状況 
 従業員の悩み、不満、苦情、トラブルなどを受け付けるための相談窓口を設置している企業は全体の73.4%あるが、従業員1,000人以上の企業では96.6%とほとんどの企業で相談窓口を設置しているのに対して、従業員99人以下の企業では37.1%と低い水準にとどまっている。
 社内に設置した相談窓口で相談の多いテーマとして、パワーハラスメントはメンタルヘルスの不調に次いで多くなっている。
(2)パワーハラスメントの発生状況
 実際に過去3年間にパワーハラスメントに関する相談を1件以上受けたことがある企業は回答企業全体の45.2%で、実際にパワーハラスメントに該当する事案のあった企業は回答企業全体の32.0%であった。
 一方、従業員に関しては、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した者は回答者全体の25.3%であった。
 企業に寄せられるパワーハラスメントに関する相談について、当事者の関係をみると、「上司から部下へ」、「先輩から後輩へ」、「正社員から正社員以外へ」といった立場が上の者から下の者への行為が大半を占めている。
(3)パワーハラスメントが発生している職場とは
 企業調査において、パワーハラスメントに関連する相談がある職場に共通する特徴として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が51.1%と最も多く、「正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場」(21.9%)、「残業が多い/休みが取り難い」(19.9%)、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」(19.8%)が続いている。従業員調査でも同様の傾向が示されている。
(4)パワーハラスメントの予防・解決のための企業の取組と効果
 回答企業全体の80.8%が「パワハラの予防・解決を経営上の課題として重要」だと感じている一方で、予防・解決に向けた取組をしている企業は45.4%にとどまり、特に従業員99人以下の企業においては18.2%2割を下回っている。
 パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組として実施率が高いのは、「管理職向けの講演や研修」で取組実施企業の64.0%で実施され、「就業規則などの社内規定に盛り込む」(57.1%)が続いている。実施している取組の効果が実感できるかという点については「講演や研修」など直接従業員に働きかける取組の効果の実感が高い一方で、「就業規則に盛り込む」といった事項では相対的に低くなる傾向が見られる。「就業規則に盛り込む」といった対応は企業規模に関わらず実施できるものの、「講演や研修」といった対応は一定程度の従業員規模がないと実施しにくいこともあり、特に従業員99人以下の企業での実施率が低くなっている。
(5)パワーハラスメントの減少に向けて求められること
 企業調査において、パワーハラスメントの予防・解決の取組を進めるに当たっての課題として最も比率が高かったのは「パワハラかどうかの判断が難しい」で、回答企業全体の72.7%が課題としてあげている。また、取組を進めることで懸念される問題として、「権利ばかり主張する者が増える」(64.5%)、「パワハラに該当すると思えないような訴え・相談が増える」(56.5%)といった項目が多くあがっている。
 一方、従業員調査において、過去3年間にパワーハラスメントを受けた経験者のうち、46.7%が「何もしなかった」と回答しており、社内の相談窓口に相談した者の比率は1.8%と低い。
3 パワーハラスメントの予防・解決のための取組を進める視点
 今回の調査結果から、パワーハラスメントの予防・解決への取組にあたっては、以下の3点を意識して進めることが重要であると考えられる。
(1)企業全体の制度整備
 実際にパワーハラスメントを受けた者が相談窓口に相談する比率は極めて低いことから、単に相談窓口を設置するだけでなく、相談窓口が活用され、解決につなげるアクションを促すような仕組みづくりもしていく必要がある。さらに、パワーハラスメントに関する研修制度や、就業規則などの社内規定にパワーハラスメント対策を盛り込むことなど、総合的な取組をしていくことが重要である。
(2)職場環境の改善
 パワーハラスメントの実態を把握し、解決につなげるアクションを促すためには、上位者がパワーハラスメントについて理解した上で、部下等とのコミュニケーションを行うことにより、パワーハラスメントが生じにくい環境を作り出すとともに、パワーハラスメントに関する相談がしやすい職場環境を作り出すことが重要である。また、職場における働き方についても、労使で十分話し合って、労働時間や業務上の負荷によりストレスが集中することのないよう配慮することも、パワーハラスメントをなくすことにつながると考えられる。
(3)職場におけるパワーハラスメントへの理解促進
 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」をもとに、各企業は、自社の状況を踏まえ、労使の話し合いのもと、会社としてのパワーハラスメントについての考え方を整理し、職場においてパワーハラスメントの予防・解決への意識啓発を進めていくことで、パワーハラスメントかどうかの判断やパワーハラスメントといえない相談が寄せられるといった課題の解決に近づくことが期待される。パワーハラスメントの予防・解決への取組を進め、従業員の関心が高まることで、一時的にはパワーハラスメントの相談が増えることも予想されるが、しっかりと相談に対応していく中で、各種取組の効果が現れ、将来的にはパワーハラスメントをなくすことにつながると考えられる。

関連サイト http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002qx6t.html