撰要永久録[高野家文書]について

撰要永久録の概要

撰要永久録 公用留 巻1
撰要永久録 公用留 巻1

撰要永久録は、南伝馬町(現中央区京橋)に居住した伝馬役兼町名主高野家の10代直孝、11代直寛、12代直清の3代にわたって作成された編年体の記録である。町触を集録した「御触事」、伝馬役に関わる事項をまとめた「御用留」、町政に関する記事を収載する「公用留」からなる。

高野家について

江戸の伝馬は街道筋の宿場ではなく、町奉行支配の町が担当した点に特色がある。大伝馬町・南伝馬町・小伝馬町の三伝馬町である。この内、南伝馬町の伝馬の責任者で伝馬役を名主役と兼帯で務めたのが高野家であった。
道中伝馬役は公用の荷物運搬について江戸四宿(品川・板橋・千住・内藤新宿)へ人・荷物・書状を搬送することであった。

高野家中興の祖とされる高野直雅は、天正18年(1590)の家康関東入国の際、旧家の故をもって召し出され、諸国道中伝馬役及び居住地宝田村の支配名主役を命ぜられたという。その後、慶長11年(1606)に南伝馬町の地を拝領している。由緒ある草創(くさわけ)名主である。

関連出版物

同家の系譜と所蔵資料、町方支配については以下の文献に詳しい。
『都史紀要28 元禄の町』(1981年、東京都)
吉田伸之『近世巨大都市の社会構造』(1991年、東京大学出版会)
『南伝馬町名主高野家 日記言上之控』(1994年、東京都)

撰要永久録 御触事

江戸は火災が頻発していたこともあり、幕府や町奉行所は江戸の町々に達した法令=「御触」を系統的に保存していなかった。このため奉行所から名主に対して御触の発出や経緯・内容について問い合わせが行われていた。そこで草創名主であった高野家では伝来の記録類等を参照し、重要な御触を選び、それらを編年体にまとめた記録を作成した。これが撰要永久録 御触事である。いわば包括的な江戸の法令集であり、江戸幕府政治の基礎史料として重要な内容を備えている。

巻1から巻79までのうち74冊が現存し、収録記事は正保5年(1648)から文久2年(1862)に及んでいる。

撰要永久録 御用留

主として伝馬役に関する記録を編年体にまとめた記録。江戸の交通史・流通史の基礎史料として重要な内容を備えている。

御用留は26巻、附録1巻からなり、収載記事は天正18年(1590)から嘉永7年(1855)に至る。

撰要永久録 公用留

主として高野家が町名主として携わった町政運営に関する記録を収録したもの。その範囲は幅広く、人別支配、諸役負担、訴訟関係、町屋敷関係、道路・橋梁・上水・下水の修復管理、木戸番・火之番の管理、治安維持、異変対応、防火・町火消統制、出版統制等、およそ町の運営にかかるあらゆる内容が網羅されている。江戸町方研究にとってきわめて重要な史料群といえる。

公用留は59巻、附録1巻からなり、収録記事は慶長10年(1605)から元治元年(1864)に及んでいる。

資料リスト・資料画像

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