都史紀要20 続・東京の初等教育

はしがき

本稿は前編にひきつづき、小学校令公布以降、明治四十年にいたるまでの、東京における私立小学校の実態を、公文書その他によってあきらかにしたいという意図のもとに編纂したものである。

小学校令は最初の公布以来、数次にわたる改正がなされ、そのつど府令、府達が公示されたが、あまり多いので、そのうちのわずかしか収録することができなかった。この期間に東京府知事あてに提出された開学その他の届書は、勅令公布直後が欠けているので、実際には明治二十一年以降のものが最初であり、しかもみるべきほどのものはない。明治四十年までを、編纂の便宜のため、四期にわけて記述したが、もっとも豊富なのは明治二十七年以降三十二年までで、その量においては他とのバランスを欠いている。それにもかかわらず、その部分を再分しなかったのは、同質のものが多く一括する方がのぞましいと考えたからである。

本稿でも前篇と同様抽出方式によったができるだけ特色あるものをえらぶように意をもちいた。東京の私立尋常小学校も、明治二十五・六年の二七九校をピークとして年毎に減少し、公立対私立の比率も三十八年以後は逆転している。明治二十六年の三多摩編入には私立小学校の編纂に大きな影響を与えるものと期待していたが、併合前についての史料を他に求めることができず、中途半端なものになったのは心のこりである。しかし、三多摩地区だけは期別のなかに挿入しないで独立した一篇としてあつかった。

本稿の編纂と執筆は前篇と同じく手塚竜麿が担当した。

昭和四十六年二月
東京都公文書館

続・東京の初等教育 目次

はじめに(1)
小学校令の公布(1)、小学校令の改正(3)、代用私立小学校(5)
初等教育と国家統制(10)

第一期(明治二十一年~二十六年)(14)
小学校令施行後の私立小学校(14)、私立小学校組合規約(16)
神田区私立小学校小組合(17)、私立小学校小組合の結成状況(21)
私立小学校大組合(22)、寺院同盟私立小学校組合創立委員(24)
小学校教科用図書(25)

第二期(明治二十七年~三十二年)(32)
東京女学館附属小学校(34)、同時に設置を許可された私立小学校(41)
その他の諸学校(43)、代用小学校の成立(45)
東京女子尋常小学校(52)、明石小学校(56)
私立小学校設立者資格条件の変更(63)、小川尋常小学校(67)
大村尋常小学校(69)、小川尋常小学校補習科(70)
文貴尋常高等小学校(72)、代用校に指定された小学校(76)
慶応義塾幼稚舎附属小学校(77)、文部省訓令第十二号の影響(78)
若瑟尋常小学校(81)

第三期(明治三十二年~三十六年)(88)
代用小学校の継続(88)、高等竜和小学校(89)
日本尋常高等小学校(94)、井上女子高等小学校(97)
高千穂尋常高等小学校(98)、済美学校小学部(104)

第四期(明治三十七年~四十年)(114)
精華尋常高等小学校(24)、小石川区の代用小学校(119)
日本女子大学校附属豊明小学校(120)、二部教授の編制(125)

三多摩の私立小学校(130)
三多摩の東京府移管(130)、移管後における三多摩の公私立小学校(130)
折田尋常高等小学校(132)、折田小学校冨士見分校(135)
冨士見尋常小学校(136)、江北尋常小学校(142)
明倫尋常小学校(145)、開成尋常小学校(147)
原田小学校(152)、桧原高等小学校(152)

むすび(158)
人名索引(巻末)
巻頭写真